PLAYZONE note

少年隊 Playzone(1986-2008)

【09】PLAYZONE '94 MOON

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Playzone '94「MOON」

上演) 上演期間は1994年7月5日 〜7月31日(青山劇場)、8月4日〜8月12日(フェスティバルホール)。計45公演。通算観客動員数50万人突破。

 

〔第一幕〕

Overture(星が運んだ物語/MOON -MAIN THEME- / 星が運んだ物語)

M4 CRESCENT -三日月-(作詞:井沢 満、作曲:清岡千穂、編曲:久米大作(東山)

SO MANY MOON(作詞:MOON COMPANY/塩月美和、作曲:ボブ佐久間)

TWO MOON(作詞:MOON COMPANY/塩月美和、作曲:ボブ佐久間)(大村、森山)

M2 Zig-Zag(作詞:井沢 満、作曲:清岡千穂(錦織)

M5 X1 バツイチ(作詞:井沢 満、作曲:浅田 直、編曲:藤原いくろう(植草)

M7 透きとおる(作詞:井沢 満、作曲:清岡千穂、編曲:倉田信雄(大村)

M3 星が運んだ物語(作詞:井沢 満、作曲:清岡千穂、編曲:若草 恵)(東山、森山)

ある少女の終曲 (Inst) (作曲:ボブ佐久間)

M1 MOON -MAIN THEME-(作詞:井沢 満、作曲:清岡千穂、編曲:若草 恵)(森山、錦織、植草)

M6 Lunatic -恋- 作詞:森 浩美、作・編曲:長岡成貢(森山)

二番街の仲間  (Inst)(作曲:ボブ佐久間)

 

〔第二幕〕

夜の虹 MOONBBOW(作詞:MOON COMPANY/平出よしかつ、作曲:ボブ佐久間)(東山)

Zig-Zag II作詞:井沢 満/塩月美和、作曲:清岡千穂/ボブ佐久間)(錦織)

僕のMoon Child(作詞:MOON COMPANY/平出よしかつ、作曲:ボブ佐久間)(植草)

SO MANY MOON (Inst) (作曲:ボブ佐久間)

満月(作詞:MOON COMPANY/塩月美和、作曲:ボブ佐久間)(森山)

CRESCENT II作詞:井沢 満、作曲:清岡千穂)(東山、森山、大村

夜の虹II(作詞:MOON COMPANY/平出よしかつ、作曲:ボブ佐久間)(錦織、植草)

Cool作詞・作曲:林田健司(東山)

M8 Kirara キララ(作詞:井沢 満、作曲:清岡千穂

星が運んだ物語(作詞:井沢 満、作曲:清岡千穂(東山、森山)

夜の虹 III(作詞:MOON COMPANY/平出よしかつ、作曲:ボブ佐久間)(東山)

夜の虹 IV(作詞:MOON COMPANY/平出よしかつ、作曲:ボブ佐久間)

MOON -MAINT THEME-(作詞:井沢 満作曲:清岡千穂

 

〔カーテンコール〕

Baby Baby Baby (作詞:久和カノン、作曲:安田信二

We'll Be Together  (作詞: ジャニー喜多川/小倉めぐみ、作曲: Joey Carbone

 

ミュージカル編曲:南 安雄/石田勝範/長谷川雅大/小野寺忠和/栗田信生/藤野浩一/ボブ佐久間

M1〜8はサントラ収録曲順序。記載のない曲はサントラ未収録。 

 

 

 

 ストーリー) 

夜、都会の公園。昼間はそれぞれの仕事を持つ若者たちが、月明かりの下、 『Moon』 というミュージカルの練習をしている。デュエットする伊吹(東山)と友浬子(森山)。しかし友浬子は伊吹の歌唱が不満で、歌を途中で止めてしまう。互いを非難しあう二人。 伊吹は野心的に海外ミュージカルのオーディションにもチャレンジしていたが、恋人が自分から離れていくことを怖く思った友浬子が、彼の挑戦を阻んだことをきっかけに、二人の仲はこじれていたのだ。
彼らの周りにはカンパニーのメンバーたち。伊吹にひそかに恋心を寄せる学生の菜緒(大村)、その菜緒に心を寄せる陸(植草)、友浬子に心を寄せる孝(錦織)。すれ違う心を、それぞれが満ち欠けする「月」に例えて語り合う。
 
友浬子との関係に疲れていた伊吹が、菜緒の気持ちに応え、一緒に映画を見に行くことになった日、待ち合わせ場所にいる伊吹の方へ向かって走り出した菜緒が、不運にも交通事故で命を落としてしまう。
ショックで声が出なくなった伊吹には、友浬子の必死の励ましも届かない。菜緒に思いを寄せていた陸も伊吹を責め、孝は公演の中止を決意する。
伊吹はカンパニーから去っていく。
 
5年後、伊吹は引き続きミュージカル俳優としてチャレンジを続けていた。ある日、オーディションを受けるために劇場を訪れると、そこにはかつて自分たちが練習をしていた夜の公園そっくりの風景が。驚く伊吹の前に現れたのは孝。もともとコンピューターグラフィックの仕事をしていた彼は、かつての公園を再現した舞台背景で、今度こそ『Moon』を上演したいと、当時のメンバーにオーディションの案内を送付していたのだ。結婚し、一児の父親となった陸、そして孝と共に暮らすようになっていた友浬子も現れる。
戸惑う伊吹だったが、皆に説得され、久しぶりに友浬子とデュエットをする。
息の合った二人の歌声に、孝も陸も納得するが、伊吹は友浬子に「君の歌はダメになったので、一緒には歌えない」と厳しく言い放つ。ショックを受けて立ち去る友浬子。
 
しかしそれは伊吹の本心ではなかった。孝と友浬子が二人でもう新たに未来に向かっていることを痛感した伊吹は、敢えて嘘をついたのだった。伊吹は、相変わらずな自分と、変化したメンバーとで『Moon』を上演することに意味を見出せず、また一人、去っていった。
 
 
映像作品)

VHS/LD『PLAYZONE'94 MOON』(1994年10月5日/1997年11月22日に廉価版VHS再発)収録時間: 2時間4分

DVD『少年隊 35th Anniversary PLAYZONE BOX 1986-2008』(2020年12月12日)収録時間:2時間4分

音楽作品)CD『少年隊ミュージカル PLAYZONE'94 MOON』(1990年6月17日)
 

キャスト)

少年隊: 錦織一清

     東山紀之

     植草克秀

坂本昌行

長野 博

 

大村真有美

森山良子(特別出演)

 

 

 

スタッフ)

 監修:ジャニー喜多川

作:井沢 満

演出:鴨下信一

振付:前田清美、松岡優子

アクションコーディネーター:渥美 博

美術:堀尾幸男

音楽監督:ボブ佐久間

音楽プロデュース:渡辺有三

衣装:宮本宣子

照明:勝柴次郎

音響:松木哲志、山崎 猛

舞台監督:工藤静雄

プロダクションマネージャー:小林清孝

 

企画:安倍 寧

 

 

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プレゾン9作目、『MOON』。

昨年の『WINDOW』以降、1993年11月19日にはシングル「Excuse」、12月1日 アルバム「愛は続けることに意味がある」を発売し、1994年3月8日にはゴールデンアロー賞大賞受賞という快挙を成し遂げたものの、どれも今ひとつ当時は話題にならなかったんでしょうか? 個人的には「Excuse」が少年隊で一番好きな曲なので、こんな名曲が売れなかったというのは本当にもどかしい。今からでも売れて欲しい。

そんな時期を経ての『MOON』。
正直、これまでで最大の難関でした!
噂から予想していたけれど、難しい。
この作品の面白さを見つけるの、大変難しかった!!!笑

もちろんシンプルにダンスシーンなど、見どころはあって、楽しめるんですが、ヒガシも限定版の中で名指しで「いい作品ではないもの」として挙げていたことに素直に納得してしまいました。もちろん生の舞台には、映像だけで見てると分からない良さが絶対あったはずなので、是非見た方に教えていただきたいところなんですが。

そもそもはCATSの犬版?として想定していたのが、どういう理由か変更されていき、結局、「ある場所でミュージカルの練習をしている」というだけの密室劇みたいな話に。作者の井沢満氏は有名な方ですが、検索してみると、今は反韓・反中のネトウヨ論客になってしまって、トホホな感じなんですね…。ぶっちゃけ、本作の元凶は、話が面白くないこと以外の何モノでもないので(あと森山良子の違和感)、敢えてそこはスルーして、「それでも」!!せっかく残っている貴重な映像なんだから、面白く見たい!!と挑みました。

 

 

前作までと大きく異なるのは舞台構造。セリが封印され、全体が奥に向けて緩やかな坂に。上からも見えるというのはとても面白い。舞台の動きを犠牲にしただけあった感。この傾斜で踊るのは大変そうだけれど、West Side Storyばりに2チームに分かれた群舞など、この角度では見ごたえある!!ニッキ vs ヒガシで、かっちゃんがハミゴになるという振り付けも、笑いを誘って面白い。

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 第一部の設定は「公園」、第二部はその公園を再現した「舞台」。間に挟まる事件もこの公園で回想されるので、結局、舞台は一切動かなかった。

 

もう一つの特徴は、舞台美術、衣装などがすべて「青」なこと。

私がむかしバイトしていた喫茶店は店内の照明がすべて青いことで有名で、その理由は「青は女性をより美しく、男性をより若々しく見せる」ということらしかったのだけど、とにかく「青い空間」というのは異空間。非日常。たまに日常を離れ、身を潜めるには最適で、とても落ち着くけれど、ずーーーっと青いところで寝起きしていたら、絶対、頭おかしくなると思う。

 

衣装は藍染グラデーションのようでかわいいけれど、コンセプチュアルな感じが90年代『装苑』の装苑大賞応募作品を思い出した。

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 伊吹(東山)、孝(錦織)、陸(植草)

 

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 友浬子(森山)、菜緒(大村)

 

といった美術、衣装面での『MOON』は好きです。むしろ。

 

しかし、はっきり書いてしまうけれど、好みの問題もあるけれど、音楽が面白くない!(すいません!)
久しぶりにサントラが、しかも予習できるように公演前に出たのに、ここに入っている清岡千穂さんの曲がどうにも面白味が感じられなくて、何度も歌われる「星が運んだ物語」に、もうエエて、と言いたくなってしまいました。

彼女の代表曲はドラゴンボールの主題歌「CHA-LA HEAD-CHA-LA」らしく、他にもニッキのアニメ映画主題歌「夜明けのレジェンド」も彼女の作らしいけれど、ヒガシソロ曲「CRESCENT」がまんまエルトン・ジョンの「Your Song」なこととかよかったんですかね…?
一方、今回音楽監督扱いになっているボブ佐久間さんの作った曲は面白くて、「Zig-Zag II」とクレジットされているニッキソロ曲前半のブルージーな部分なんかは一番良かった。ボブさんの曲がどれもサントラ未収録なのは、サントラ発売後に冴えない楽曲フォローのために作ったから??など、想像してしまう。 

 

ニッキは後半は「魂売ったみたいだろ」と自虐的に述べていたサラリーマンスタイルで登場。今回は狂言回し的な役。

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 かっちゃんも同様に、脇役。

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 大村さん、無邪気でかわいい。いまはアクセサリーデザイナーらしい。

 

 

本作、主役は完全にヒガシ。

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 月の光を集めて飲むシーンが美しかった。

 

テーマになっている「月」は毎日その形を変える。それに対して、主役の伊吹(ヒガシ)はそうした「変化」に翻弄されるだけの、不動のキャラクター。
彼以外はみんな、時間とともに変化する。関係性も仕事も。だけど伊吹だけは、いつまでも理想のミュージカルを追いながらも芽が出ないという、人生の辛い時期に永久に閉じ込められてしまっており、周りからの働きかけにも応じない。彼は一体何に抵抗していたのか…

 

 

まず『Moon』はこのPlayzoneシリーズの中で「女性」の扱い方に大きな変化が起こっております。ちょっと整理してみると、

 

  *N(ニッキ)、U(かっちゃん)、H(ヒガシ)

86 Mistery: NUH … フェアリーメリー(事件の依頼者)

87 TIME19: N,  UH … アリス(友情)

88 Capriccio: U ←→ ジュリアン(一目惚れから死別まで、短距離走) 

89 Again: NU(女性の姿をしている時に少しだけ)

90 Mask: N中尾ミエ(仕事仲間)

91 Shock: NUH … 山村さん(マネージャー)

92 さらばDiary: U … エリ(妹)

93 WINDOW: ←→ 真由美(一目惚れから死別まで、中距離走)、

        U ←→ エリコ(恋が始まったものの、エピソードとして回収されず) 

 

という感じで、女性が登場し、恋愛感情が生じた場合、すぐに女性が殺されてました。見事に。
一方『MOON』は、奈緒は事故死するものの、ヒロインの友浬子は伊吹と孝の両方とカップルに。とはいえ特にラブシーンはなし。そして伊吹の方が身を引くことで、森山良子は見事に生き残るのでした。

 

改めて言うまでもないけれど、ジャニーズとは「少年」タレントのみで構成されている事務所。そのミュージカルは当然「少年たち」がメインキャスト。観客のメインは「少女たち」。
タカラヅカでは女性が男性役を演じ、歌舞伎やStudio Lifeでは男性が女性役を演じるけれど、ジャニーズにおいては、暗黙で自分とは別のジェンダーを演じることは皆無なので、女性の役は外部の女性が演じている。Playzoneもまだ20歳そこそこ、ちゃんと少年に見える少年隊が始めたこともあってか、恋愛がストーリーの要になってなかったけれど、9年経って、本人らも大人になり、観客の方も年齢を重ね、色々と変化せざるを得なくなってきたのか、前作あたりから「恋愛」が登場。

そもそもこの『Moon』、リアルタイムで見ていた方々にとってはむしろ「かっちゃんが結婚を発表した舞台」としての印象の方が強そう。 気になってジャニーズ結婚史調べてみたら、

 

1990年6月 薬丸裕英

1991年11月 布川敏和

1992年9月 岡本健一

1993年10月 田原俊彦

1994年6月 近藤真彦

1994年7月 植草克秀

1995年1月 野村義男

1995年7月 本木雅弘

2000年12月 木村拓哉

 

トシちゃん、マッチに続いてのかっちゃん!ここ、ちょっとラッシュの時期だったんですね。すでに20歳になっていたニッキを擁するグループを敢えて「少年隊」の名前のままデビューさせたことからも分かるように、実年齢は二の次で「永遠の少年性」という概念の方が重要だったのだろうけれど、事務所自体、実際に「少年」たちが結婚し出すと、「そのまま」いくわけには行かなかっただろうなあ、と想像。少年の枠組みの中で作れる作品の幅と、ジャニーズファン以外の観客にも認められる作品の不一致をどうしていくか、迷走中だったのでしょう。事務所全体として。

 

このジャニーズの「少年達」の世界というのは、異性愛規範の社会を前提とした「ホモソーシャル」の楽園で、それは「男性同性愛を巧妙に排除すると同時に女性を客体化・周縁化するシステムによって、男性同士の絆(男性達の強い友情や信頼関係)を成立」(西原、2019)させているので、「女性」の登場のさせ方が難しいんですよね。女性はあくまで「自分達」とは別の、いつか大人になった時に家庭を築くパートナーとしての存在(いまはモラトリアム期間)なので、感情移入させるような女性キャラが登場すると、彼らの世界に大きな波紋が生じるというか。本作の森山良子のキャラは、ともすれば「主人公」になり得るものだったけれど、そこを敢えて伊吹(ヒガシ)側の視点に固定させた力業。そこには彼女の見た目や声質などが左右しているように感じられたけれど、この配役が女性の主人公化を妨げることを狙っていたなら、ほんと恐ろしいぜ、J事務所…。

そして変化に抗い、ジャニーズ・ネバーランドに踏みとどまる運命を背負わされたヒガシは、実際は結婚して子どもを得ても、ずっと変わらぬ容姿、運動能力の維持に努力を続けており、頑なに変わらないことを選択しているように見えるけれど、実はその表面的な不変を維持するために、裏では実はたくさん変化しているのかもしれない。

いまコロナ禍の中で、あらゆることが変化を余儀なくされて、良い変化もあれば、寂しいものもあり、変化ということ自体が是非を問われるものではない。ニッキとかっちゃんの再スタートも「変化」だけれど、かえって「変わってないなあ!」という部分も感じられて、うれしい。そんな二人をきっとどこかで見つめているだろう2021年のヒガシの「不変」を思いながら、彼の『MOON』、もう一度見てみましょうか。

 

 

参照)西原麻里「ジャニーズの関係性はホモソーシャルか   ー〈絆〉の表現が揺るがすもの」(『ユリイカ 11月臨時増刊号 総特集:日本の男性アイドル』2019年) 

このユリイカの特集号はとても面白かった。私が最近少年隊を好きになって度々驚くのは、80年代〜90年代当時はまだ普通に「好きな異性のタイプは?お嫁さんにするなら?」という、今ならセクハラと認定されるようなアイドル定型質問が横行していたこと。この頃だとあり得なかったであろうSexy Zoneの「Peach!」(2018)のようなジェンダー交差した歌(歌詞の主人公が女性)が登場してこられるようになったってことは、やっぱ「Baby、今いい時代でしょう?」(by 岡村ちゃん

 

 

 

Youtubeでは今のところほぼ全編見られます。