PLAYZONE note

少年隊 Playzone(1986-2008)

【08】PLAYZONE '93 WINDOW

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Playzone '93「WINDOW」

上演) 上演期間は1993年7月8日 〜8月1日(青山劇場)、8月13日〜8月19日(フェスティバルホール)。計41公演。通算300回公演達成。

 

〔第一幕〕

Overture(作・編曲:長岡成貢

Work on Works (作詞:森 浩美、作・編曲:長岡成貢、コーラスアレンジ:椎名和夫(錦織)

Window(作詞:森 浩美、作・編曲:長岡成貢(錦織)

アドは完璧(作詞:森 浩美、作・編曲:長岡成貢

Call us please(作詞:森 浩美、作・編曲:長岡成貢

Work on Works(作詞:森 浩美、作・編曲:長岡成貢)

Body heat TOKIO(作詞:森 浩美、作・編曲:長岡成貢TOKIO

Today has gone(作詞:森 浩美、作・編曲:長岡成貢(東山)

Dance (作詞:森 浩美、作・編曲:長岡成貢(東山)

Waitress Step 作・編曲:長岡成貢、コーラスアレンジ:椎名和夫

リッチマンになろう 作詞:森 浩美、作・編曲:長岡成貢(植草)

君と二人だけの朝(作詞:森 浩美、作・編曲:長岡成貢(錦織、影山)

 

〔第二幕〕

Overture(作・編曲:長岡成貢

Work on Works (TOKIO ver.)作詞:森 浩美、作・編曲:長岡成貢TOKIO

Battle of Pride作・編曲:長岡成貢

Blue Night作詞:森 浩美、作・編曲:長岡成貢(東山、錦織)

普通に暮らそう作詞:森 浩美、作・編曲:長岡成貢(植草、前田)

戦いのDrum作・編曲:長岡成貢

Window作詞:森 浩美、作・編曲:長岡成貢、コーラスアレンジ:椎名和夫

Work on Works作詞:森 浩美、作・編曲:長岡成貢

 

〔カーテンコール〕

Window作詞:森 浩美、作・編曲:長岡成貢、コーラスアレンジ:椎名和夫

 

ストーリー) 

ゆずる(錦織)は父から譲り受けた小さな清掃会社「Work on Works」を経営している。毎日、自ら都会のビルの窓を外から拭き、その中で楽しそうに過ごす人たちを眺めていた。2週間前からこの会社で働き出した達也(東山)は、昼間は別の会社でサラリーマンをしながら夜、ここで働く二重生活でお金を貯めている。
ある晩、ゆずると達也がビルの深夜清掃をしていると、チンピラが一人逃げ込んでくる。追いかけてきたヤクザを追い出したゆずると達也は、そのチンピラ、良太(植草)に頼まれ、彼をしばらくかくまうことになってしまう。
会社の若い従業員たち(TOKIO)はバンドをやっている。彼らのライブ会場に皆で出かけた晩、達也は妹の真由美をゆずるに紹介する。一目で恋に落ちた二人。一緒に過ごしたいと願う二人の様子を見て、達也は真由美が病気で、その治療費のために金が必要なことをゆずるに説明したうえで、デートを許可し、真由美を託す。夜の街でロマンチックに楽しく過ごすゆずると真由美。しかしはしゃぎ過ぎた真由美は倒れてしまう。医者から真由美の余命を告げられる達也。
いっぽうそのライブ会場で追っ手のヤクザに見つかり、逃げ出した良太は、立ち寄った深夜レストランで人並み外れてドジなウエイトレスのユカと出会う。良太は彼女に心を開き、ヤクザの事務所から持ち出した極秘の帳簿を利用して金持ちになろうとしているという秘密を語る。互いに惹かれ合う二人だったが、良太はヤクザに捕まってしまう。
引き換えに帳簿を持ってくるよう、ヤクザからゆずるの清掃会社に電話があり、ゆずるはすぐ向かおうとするが、達也は自分が良太を助けに行くので、ゆずるには代わりに真由美のところへ行って欲しいと頼む。もう真由美の時間はわずかしか残されていなかったのだ。
病室、危篤の真由美は自分を外に連れ出して欲しいとゆずるに頼む。ゆずるは窓から真由美を連れ出し、二人は窓拭きのゴンドラに乗りこむと、星の輝く夜の街の上へ高くあがっていった。
 
 
映像作品)

VHS/LD『PLAYZONE'93 WINDOW』(1993年10月6日/1997年11月22日に廉価版VHS再発)収録時間: 2時間22分
*ビデオの最後に「You're my beautiful~美しい人へ~」のカラオケ用ビデオ収録。夜明けの東京を、花束を持って歩く3人。

DVD『少年隊 35th Anniversary PLAYZONE BOX 1986-2008』(2020年12月12日)収録時間:2時間22分

 

音楽作品)「WINDOW」(1993年7月) 劇場のみで販売された1曲入り8cmシングル。

 

キャスト)   

少年隊:錦織一清(ゆずる)
    東山紀之(達也)
    植草克秀(良太)

TOKIO:城島 茂
    山口達也
    国分太一
    松岡昌
    小島 啓
    長瀬智也

影山会里子(真由美)

前田倫子(ユカ)

 

井上仁司
岩川 護
斎木としや
佐藤竜一
新上裕也
高 豊和
長田利夫
宮沢 彰
脇坂真人
宮崎ひとみ
岡島麻美子
小沼葉子
後藤未雪
小市理美
鈴木昌
富野由紀
峯 いずみ

 

スタッフ)

監修:ジャニー喜多川

原作:森 浩美

脚本:関根清貴

演出:湯沢紀保

振付:名倉加代子、須山邦明、松岡優子、阿部雄三〔サンチェ〕

アクションコーディネーター:渥美 博

美術:島川とおる

音楽:長岡成貢

衣装:宮本宣子

照明:内田忠夫

音響:山崎 猛

舞台監督:浅川秀明

 

企画:安倍 寧

協力:こどもの城 青山劇場・東京、フェスティバルホール・大阪

 

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8年目のプレゾン!
順番に見ていっているので、この後の作品の雰囲気などはまだ知らないのですが、前作からすごく変わった!!前作でもすごく変わってたのだけど、あれはまだそれまでの延長線上だったと思えるくらい、一気に大人になりました。急にちゃんとふつうの芝居になった(失礼!)感じ。前作まで、とくに初期の作品はあらすじを書くときに、だいぶ言葉を補わないと意味がわからなかったのだけど、本作は全然それが要らなかった。また第一作から「ミステリーゾーン」「過去へのタイムトリップ」「悪魔と天使」「天国」「ハムレット」「白鯨」「近未来の廃墟」と、いつも非現実な設定が入っていたのだけれど、それがこの「Window」にはなく、舞台も「現代」。さらにショーもないので、ファンからは非常に地味とみなされているようだけれど、夜のシーンの多い、ロマンチックな雰囲気の作品。

いつも通り前年のPlayzoneから1年間の少年隊の活動を見てみると、充実してそうな個人活動のほか、1993年4月27日にはディナーショーを収めたビデオ『少年隊 DINNER SHOW 愛と勇気』と、2年4か月ぶりのシングル 『You're my beautiful~美しい人へ~』(皇太子成婚にあやかったもの?)を同時に発売している。

 

さて『Window』。
原作者としてクレジットされているのは、劇中歌の作詞を手掛ける森浩美氏。彼は少年隊「じれったいね」などの作詞家であり、田原俊彦SMAP他、たくさんの大ヒット曲を書いている。ストーリーの雰囲気としてはVシネヤクザモノをロマンチックにした感じで、容易に「映像」が想起される。そして本作もまた音楽が良い!劇場販売のみだった1曲収録のCD以外、サントラが出ていないのが残念!!音楽を手がけた長岡成貢氏も90年代のSMAPの仕掛け人の一人で、現在も多方面で活躍中。

テーマ曲は「WINDOW」だけれど、私にとって印象的だったのは、「Work on Works」の方。いろんなアレンジで登場するけれど、前半、ニッキが一人でアカペラで歌い、それに徐々にコーラスがコール&レスポンスしていくバージョンを聞けば一目瞭然、これはまさに「労働歌」ですね。つまり働きながら歌う歌。奴隷だったアメリカの黒人たちの労働歌とは、黒人霊歌、ゴスペル、ブルース、ジャズのルーツ。ゆずる(ニッキ)が夜の清掃作業の時に「♪わたしゃビルのおそうじおばちゃん ワッドゥビシュビドゥバー」と歌っているのは、関西ブルース界の至宝、憂歌団の代表曲、「おそうじおばちゃん」。しっかり木村充揮のモノマネ入ってて笑っちゃった。

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思い出してみると、前作の『さらばDiary』は、人間が厭う労働をレプリカントにやらせるという設定で、完全に労働というものが「苦役」として扱われていたため、労働者(ロボット)の不満と反乱を招き、破滅していく「支配者階級」側の話だったのだけれど、本作『WINDOW』は逆に「労働者」側の話。ロボット、レプリカントのいない現実世界では、どうやって労働をこなすか…そこに登場するのが、心を励ます「労働歌」。「Work on Works」の歌詞に出てくるように、仕事をするには誰しもプライドや夢が必要であり、音楽は心と身体を励ましてくれる。冒頭、この曲で活き活きと踊る作業着のニッキらの姿は、『さらばDiary』の工場のレプリカントたちの固い動きとは対照的。

 

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冒頭のブランコシーンはミュージカル「How To Succeed In Business Without Really Trying」が元ネタ。

 

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ニッキが主役でかっちゃんが引っ掻き回すキャラなので、つなぎのような役のヒガシは劇中、一人、唐突?にすごく踊る。きっと内面はすごく熱い男の役なのでしょう。

 

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こういう馬鹿なチンピラ、ヤクザ映画にいるいる!(ヤクザ映画好きなもので…)と、嬉しくなるキャラのかっちゃん。かわいい。

 

また本作、注目すべきは舞台セット。最初のオフィスビルの窓や、シティライト、レストランなど、斜めのラインを強調したおしゃれな舞台美術を手掛けた島川とおる氏は、現在「巨匠」と呼ばれるほど活躍している方でした。

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従業員として活躍するTOKIOは、当時6人組。長瀬の「タンバリン」時代。今では笑い話になってそうだけど、タンバリンに関しては私はオアシスやマッドチェスターをすぐ連想しちゃうので、93年にタンバリンは全然オシャレな楽器だったと思う。

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一方、かっちゃんはジュリ扇持って、お立ち台。ちょうどジュリアナ東京が一番盛り上がっていたのがこの頃(93年の新語・流行語大賞は「お立ち台」)らしいのだけど、敢えてそこにハマらない、サタデーナイトフィーバー的?な踊りを披露。さすがパパイヤ鈴木の同級生。

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今回の二人のヒロインのうち、良太(かっちゃん)が恋をするユカは、深夜レストランのウエイトレスという設定。

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え??それって「ユカは確かに美人だ~遅番のウエイトレス」!!岡村ちゃんの「いじわる」(1988)じゃないか!!と驚いたけれど、何か共通の「ウエイトレスのユカ」の元ネタがあるのかな?

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初の「恋愛担当」、ニッキのラブシーンは、こそばゆい(良い)。
手がとっても優しい。

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本作のタイトル、テーマは「WINDOW(窓)」。

語源的に考えると、英語の「WINDOW」には「WIND(風)」が入っており、「OW」は「目」。つまりWindowとは、風を通したり、外を見るための「穴」のこと。(参照:窓研究所
「窓」は比喩として各言語で多用されており、「目」や「心」のイメージとのつながりは広く共有されているでしょう。昨年の夏、私が引っ越した新オフィスには大きな窓とベランダがあり、とても快適、……なはずだったのが、窓に恐ろしいほど積年の汚れがこびりついており、特殊スポンジで毎日コツコツと1か月ほどかけて磨き上げ、窓がきれいになると気持ちが良いことを身をもって体験。

ゆずるの清掃会社「Work on Works」の広告でも、

 「俺たちはいつでも気持ちを磨くWork on Works
  みんなの心を明るくします ぼくらは町の窓磨き」

と歌われていたように、本作でも窓はまさに「心の目」。
リッチマンになろう♪と夢見て歌う良太に、ユカは、

「リョウちゃんの心の窓は曇ってる!お願いだから自分の窓を磨いて!」

と頼んでいた。

 

さて、ただ窓を心の目と捉えるだけでは面白くないので、もう一歩考えてみたく。
社会学ゲオルク・ジンメルはそのエッセイ「橋と扉」(1909年)の中で、「扉の意味の豊かさ」を説明する際、窓を比較対象としてあげている。

 

「窓が内と外を結ぶにしても、何のために窓があるのかと考えた時、気持ちはまず間違いなしに、内から外への方向を思い描くだろう。それは外を見るためのもので、内を見るためのものではない。いかにも窓は、透明に出来ているので、ゆるゆるといつまでも続くような具合に内と外を結び付けてはいる。しかしこの結びつきの筋道は一方通行の方向しかとらず、さらにはそれが目にとっての道に限られているということで、窓は深く原理的な扉の意味の、ほんの一部分しかわがものとしてないのである。」

(『ジンメル・エッセイ集』ゲオルク・ジンメル、川村二郎編訳、平凡社、1999年、P62)

 
閉じたドアが内と外を遮断、開いたドアはそれを接続し、さらに出入りも可能という機能を持っているのに対し、窓は人が出入りするためのものではない。空間は切り離されたままであり、「内から外」を見ることがその主たる機能。あくまで「観察者」としてガラス越しに外を見るためのもの(物体が通過できないガラスの存在はとても重要)。テーマ曲「Window」の歌詞においても、「翼を広げ 扉を出てゆくのさ」と歌われていたように、外に出るためには窓ではなく「扉」が必要なのだ。

すなわち「窓」とは、基本的に内側にいる人間のために存在であり、それを「外」から見つめる「窓拭きの仕事」というのは、中に入れない人間にとっては疎外感を感じさせるものなのかもしれない。本作冒頭、終業後のOLがデートに向かう様子を、清掃中のゆずるは別世界の「ちゃんとした仕事」をしている人間の行動として寂しそうに眺めていた。作品中、ニッキが着ているスーツがなんだかどれも大きくて身体に合っていないように見えるのも、彼がホワイトカラー職ではない、ということを示す意図があったのか、逆に作業着の方はとてもしっくり似合っている。

一方、真由美は「窓」の内側に閉じ込められた存在。病室の「窓を開いて、星を見に私をここから連れ出してくれる?」と尋ねる真由美に、ゆずるは「君が望むなら、あの窓をぶち破って……あ、こんな言い方が仕事の関係上よくないね、あの窓を〈開いて〉君を連れ出してあげる」と答えていた。

「窓」はここでは格差を示す「境界」でもあり、閉じ込められた世界から自由な外界を見せるものでもある。窓は「視点(立場)」と「視線の方向」を設定するのだ。

 

達也が医者から妹の余命を告げられて落ち込んでいるとき、ゆずるが「おまえの気持ちはよく分かるよ」と声をかけると、達也は「兄弟のいないおまえには分からない」と言う。しかしゆずるも「おまえにはオレの気持ちが分かるのか?」と逆に聞き返す。ゆずると達也は「似ている」と真由美は繰り返していたけれど、立場の違うもの同士は、相手の気持ちを理解することはできないのだろうか。

本作の一番の見どころだと思われるシーンが、この劇中投げかけられた疑問のヒントになっているように思われる。達也が昔よく真由美を肩車したというエピソードを話していると、ゆずるがふいに達也を肩車で持ち上げる。親や兄弟に肩車をされた経験のなかったゆずるは、かつて肩車をしていた達也の立場に立ち、いっぽう達也は肩車されていた真由美の視点から世界を見つめることになる。 

 

 

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これは「内から」外を見るものである「窓」を、「外から」見てきたゆずるだからこそできた行為なのではないか。人々と逆方向の視点を持っていたゆずるは、窓の持つ一方的な方向性を入れ替えたのだ。最後のシーンで、危篤状態の真由美の病室に、ゆずるはドアではなく、「窓」から侵入し、「窓」から真由美を連れ出すという、窓の機能のいわば「限界突破」を行った。

物語の結末は真由美の死を伴うので、ハッピーエンドとは言えないのかもしれないけれど、主人公にしては大きな葛藤もなく淡々と生きてきたゆずるの、窓拭きという仕事に備わった特異な視点の在り方を考えていくと、他人の立場に立てる彼の優しさの背景が分かる気がした。

 

 

 

 

と、今回、真面目にまとめてしまいましたが、肩車シーン、ほんと良かった~~!!

ニッキがヒガシを肩車~~~涙!!!

 

 

Youtubeでは今のところ全編見られます。